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書評『ウォール街のランダム・ウォーカー』に学ぶ、7つの投資のエッセンス

様々な投資本や投資ブログでも引用され、投資の世界的バイブルとも言えるのが『ウォール街のランダム・ウォーカー』という本です。

投資を始めるにあたって、まずはこの本の内容さえおさえておけばOKだと思います。

が、初心者が読むには、少しハードな面もあると思うので、本書から学ぶ7つの投資のエッセンスをまとめてみました。

 

はじめに

本書は1972年に原書が発行されて以後、何度も改訂され今や第11版が出版されています。オイルショック(1973, 1979年)やブラックマンデー(1987年)、9.11同時多発テロ(2001年)、リーマンショック(2008年)といった歴史に残る大きな出来事を経て、40年以上ものあいだ、淘汰されず読み続けられている、偉大な名著です。

自然淘汰を経て生き残る本書の理論は、数多ある投資本とは一線を画す生命力を持つことは間違いありません。

 

① 株価の動きは、ランダムと思うべし

ランダム・ウォークというのは、「物事の過去の動きからは、将来の動きや方向性を予測することは不可能である」ということを意味する言葉である。これを株式市場に当てはめると、株価が短期的にどの方向に変化するかを予測するのは、難しいということだ。

数学者にとって、本物の株価チャートに見られる動きと、架空の株価チャートにおけるそれとの違いはほとんどない。

引用『ウォール街のランダム・ウォーカー』

 

|株の動きをうまく予想して儲けたい!この会社は上がりそう!

株を始めるきっかけって、こう思ったからってケース多いですよね。

ただ短期的にある会社の株価が上がると、多くの人が予測できるのであれば、その株価はもっと前から上がっているでしょう。逆も然りで、織り込み済みです。

そして自分だけ未来が見え、他人より高い精度で予測できるなんてことはありません。自分だけが持っている情報で、他人より高い精度で予測できることはあるかもしれませんが、それだとインサイダー取引。。。

つまり、過去から現時点に至る株価の動きは、それぞれの瞬間では最適な価格であって、この先どう動くかは誰もわからないのです。

プロの投資家ですらわからないものを、私のような投資初心者がウンウンと株価チャートを見たり四季報を読んで考えても、短期的な株価の動きを予想することは無理と考えるのが妥当でしょう。

(そういった情報に触れ経済の流れを学び考えることは、投資のためというより、人間的成長や経済感覚を磨く上ではとても重要だと思います。)

 

② ただし長期的に見れば、株価は上昇する

ただ一つの例外は、大半の銘柄の株価が、利益や配当の成長に沿って、長期的には上昇のトレンドを描くことである。

過去54年間について調べてみると、市場が上昇した年は35回、ほぼ同じだったのが3回、それに対して下落したのはたったの15回である。

S&P500指数のような、広く分散された株式ポートフォリオに投資していた場合には、1926年から2005年までの期間を通して年平均10.5%という高いリターンを上げることができたのである。株式投資にとって最悪だった25年間をとったとしても、年平均リターンはそれより約3ポイント低かっただけである。

引用『ウォール街のランダム・ウォーカー』

 

身も蓋もない話を①でまとめましたが、私たちミレニアル世代の投資家にとっての朗報もあります。短期的に上がるか下がるかわからない株価も、数十年のスパンで考えれば上昇する可能性は高いということです。

短期的な利益を狙うプロの投資家たちや、数十年後のリターンを待ちにくい高齢の投資家たちと比べて、私たちのような20代30代は長期での株価リターンの恩恵をより大きく得ることが出来ます。他の人にとっての価値(市場価格)よりも、自分にとっての価値が大きいモノ、それが長期的な株式投資なのです。

 

③ タイミングよく売り買いしても、勝ち続けることはない

マーケット・タイミングを利用して継続的に成功を収めたという人には、これまでお目にかかったことがない。

引用『ウォール街のランダム・ウォーカー』

 

|短期の株価の動きはランダムだから、短期で儲けるのは難しいのはわかった

 長期では株価は上がるから、若い世代ほど株を買うのが良いのもわかった

 でも、どうせ買うなら株価が安いバーゲンのタイミングで買いたい

ここまで読んで、こう考える方も多いのではないでしょうか。

私もそう思っていたのですが、本書にバッサリ否定されました。②でも引用しましたが、1年スパンでみればそもそも株価は上がる確率の方が高いのです(約70%)。この70%を超える予想をする自信がないのなら、素直に今が安いタイミングで1年後は上がると信じる方が、確率的に正しいのです。

つまり今この瞬間に運用資金を一気に突っ込むのが理論的には正しいのです。。とはいえそんな勇気を出すのは難しいですよね。私もそうです。。なので、まずはタイミングは意識せず今この瞬間に心理的に抵抗のない額で、投資を始めてみることをオススメします

④ 勝利の法則は存在しない, 黙ってインデックスファンドに投資せよ

「ダウの負け犬戦略」1991年にリチャード・オヒギンズというファンドマネージャーが提唱したもので、1990年代半ばに人気を博した。

毎年ダウ工業株30種平均の採用銘柄の中から、最も配当利回りの高い10銘柄を買うというものである。これらの10銘柄は最も人気がないのだから、通常は株価収益率も株価純資産倍率も低いと考えられる。

1920年代から直近まで検証したところ、ダウの負け犬はダウ平均を年に2~3%上回っていることを発見した。

多くの証券会社が「ダウの負け犬ファンド」を売り出した。

そして予想通り、大勢の投資家が同じゲームを始めた途端、負け犬は本当の負け犬になってしまったのだ。「ダウの負け犬」戦略は90年代の後半には毎年市場平均を下回る成績に終わった。

引用『ウォール街のランダム・ウォーカー』

 

|今この瞬間に長期投資を始めるべきなことは分かった

 ではどの会社の株を買えば良いんだろう、勝利の法則はないのか・・

私のこの疑問も、本書にバッサリ否定されました。

投資ブログ界隈では、「ダウの負け犬戦略」を実践し推奨されている方も多くいます。配当利回りの高い比較的成熟して安定している企業は、投資家としては退屈だけど、地味ながら確実に長期的に株主還元をしてくれるから、実は魅力的であるという戦略です。ここまでの長期投資戦略とも相性が良く、一見勝利の法則に思えます。

ただこの勝利の法則も、他の人が採用してしまっては、”実は魅力的”ではなく、”みんなが魅力的と思う、ただの割高な株”なってしまうのです。勝利の法則などというものは基本的にないと考えるべきでしょう。

ではどの銘柄が良いのか。それは、平均株価と連動するインデックスファンドです。AppleFacebookファイザーJPモルガンなど色々な会社の株を少しづつ小分けにしてセット売りにしてくれているのがインデックスファンドです。

投資信託というとアヤシイ印象もあるかもしれませんが、セット売りの内訳も各会社の株価に応じて機械的に決まっているので手数料も非常に安いですし、変な内訳?で株を買われ騙されることもありません。

銘柄選びの勝利の法則がない以上、無理をして銘柄を選ばなくても平均株価と連動するインデックスファンドを買っておけば間違いはありません。

 

⑤ ローリスクハイリターンなど無い

金融の分野で最も説得力ある形で検証されてきた命題は、平均して大きなリスクをとった投資家は、より高いリターンを得てきたというものである。

引用『ウォール街のランダム・ウォーカー』

 

リターン 小型株>大型株>社債国債

リスク  小型株>大型株>社債国債

過去80年間の主要な金融資産のリターンとリスクを整理したところ、綺麗に上記の結果となったようです。シンプルに、リスクとリターンは相関するということです。ローリスクハイリターンな金融資産を探す時間はムダです。もしそんな言葉の金融商品を見かけたら、相当アヤシイと思うべきです。

ただ確実にリスクを減らす方法はあります。

長期投資、分散投資、リバランスです。これを実践する簡単な方法の一つが、インデックスファンドへの長期投資です。

⑥ 20代30代にオススメのポートフォリオ

ライフサイクルに応じたアセット・ミックス

20代半ばの投資家(30代もほぼ同じ)

株式  65%

債権  20%

現金   5% 

不動産 10%

引用『ウォール街のランダム・ウォーカー』

 

『インデックスファンドに今すぐ長期投資すべきなのは分かった。

 いくらくらい投資するのがベターなんだろうか・・

私たちミレニアル世代の投資家には、極めてアグレッシブなポートフォリオが推奨されています。

もちろん今ある金融資産を、この割合にすべしということではありません。直近数ヶ月の生活費を確保しておくのは勿論、留学資金や結婚資金などで数年以内にまとまったお金が必要というケースもあると思います。あくまで資産運用に回せる資金を、この割合で運用しようという目安です。

数年以内に使う見込みはなく将来のために貯金しているお金は、現金ではなく、上記ポートフォリオ(例;65%を米国株インデックスファンド、20%を日本国債、10%をREIT)に投資すべし、ということです。もし数年以内に使う見込みのない貯金が100万円あれば、まずは65万円を楽天VTIに投資してみてはいかがでしょう。

 

⑦ どうしても個別株を買いたいなら、ババをなるべく避ける作法はある

少なくとも5年間は、1株当たり利益が平均を上回る成長を期待できる企業の株のみを購入すること

少なくとも市場平均株価収益率と同じか、それをそんなに上回っていない銘柄を買うべきである

引用『ウォール街のランダム・ウォーカー』

 

私は個別株を当てて市場平均を上回りたいという野心はないですし、勝利の法則もないと考えているので個別株を買う予定は現時点ではありません。

本書によると、ババを掴まない銘柄選びの作法はあるようです。ご参考まで。

 

 

インデックス投資のバイブルである本書。長期投資を続けて行く上で何度も読み返していきたいと思います。

これから投資を始めようという皆さま、もしこの記事で長期投資に興味を持って頂けたら、本書を手にとってみて下さい。

すでに投資を始めていらっしゃる皆さま、きっと本書を一度は目にしたことはあると思いますが、改めて読んでもそのたびに発見があるので、また読んでみては如何でしょうか。

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