株式市場において、暴落相場は付き物です。
私も2018年12月に楽天VTIで米国株投資家デビューを遂げた際、1ヶ月もたたないうちに-15%近い含み損を抱えることになり、最強寒波もびっくりなくらい震えました。
そして2020年春にはコロナショックです。
もし近い将来に、さらなる暴落相場が待っていると予想できるのなら、私たちはどんな投資行動をすべきでしょうか。
底値で投資可能資金を全力投入
なかなかこうした判断は難しいものです。
底値で全力投入するのが理想ですが、そのタイミングは誰にもわかりません。
暴落の時に、待ちに待ったバーゲンセールだと思って資金を全力投入しても、さらに下げ続けることもあるでしょう。
まだ先に底があると思い待ち続けているうちに株価が上昇し、投資タイミングを失ってしまうかもしれません。2020年コロナショック相場において、4月以降に2番底が来ると信じて買い時を失った投資家も少なくないと思います。
この戦術は、あまり筋が良くなさそうです。
ドルコスト平均法で耐える
では、相場が不安定な期間も耐えてコツコツとドルコスト平均法で積み立てていくのはどうでしょうか?この方法なら、下落時にもめげずに投資し続けるハートさえあれば、相場師ではなくても誰でも実践することが出来ます。
結論から言うと、想像以上にこの戦術が有効なことがわかりました。
ドルコスト平均法シミュレーション
モデルケースとして、リーマンショック前の2008年9月1日からVTI積立投資を始めた場合の資産変動をシミュレーションしてみました
戦術の効果を分かりやすくするために、シナリオ1(現実の世界)に対して、シナリオ2(暴落のない平穏な世界)と比較してみました。
リーマン・ブラザーズが破綻したのは、同年9月15日です。そこから連鎖的に世界規模の金融危機が発生し株価も大暴落していきました。
2008年9月1日に投資をスタートするなんて、残念極まりないタイミングです。
最初の購入から3ヶ月後の2009年3月には、-45%の水準まで落ち込んでいます。
何でこんな時に投資家デビューしてしまったんだろう、と絶望することでしょう。
現実とは違う、あり得ない想定ですが、リーマン・ショックは起こらず、順調に一定の割合で株価が上がり続けると仮定します。
上昇率は、VTIが始まった2001年6月1日から2018年12月1日までの平均成長率:年+5.45%と仮定します。
こんなことはあり得ないのですが、最高の相場のように感じますね。
毎月1日に1000ドルをドルコスト平均法で積立投資、配当は翌月に再投資するものとします。
シミュレーション結果は、こちらです。
リーマンショックの底値時(09年3月)
現実ではリーマン・ショックの底値となった、2009年3月時点での比較です。
当然ですが株価は、リーマンショックの起きているシナリオ1が、リーマンショックの起きていないシナリオ2に対して大きくビハインドです。
ただVTI株価は45%減なのに対して、この期間の積立合計額は23%減に踏みとどまっています。
株価が下がっている状況でも、ドルコスト平均法でより安値で買い増すことで平均取得単価を下げて、傷を浅く出来ています。
リーマンからの回復後(18年12月)
さてそれから時は過ぎ、シナリオ1(現実の世界)では株価も回復してきました。
シナリオ2(暴落のない平穏な世界)は、安定して成長し続けています。
VTI株価について09年から18年で見ると、前半はシナリオ2が優勢、後半はシナリオ1が優勢、トータルではほぼ互角のように見えます。
ではリーマン前から10年半の運用成績はどうなるでしょうか?
シナリオ1(現実の世界)の圧勝です。
シナリオ1は、222,782ドル、元金に対して+80%というパフォーマンスです。
シナリオ2(暴落のない平穏な世界)は、166,805ドル、元金に対して+35%というパフォーマンスです。
シナリオ1(現実の世界)は、リーマン・ショック直前という残念極まりないタイミングで投資家デビューをしたにもかかわらず、素晴らしい成績です。
愚直にドルコスト平均法で積み立てていけば、いずれ訪れる株価の回復期に、大きな利益が生み出されることがわかります。順調に一定の割合で株価が上がり続けるシナリオ2の一見理想的な相場よりも、遥かに高いパフォーマンスを実現しています。
序盤の暴落時にコツコツと一定額を投資し続けることで、効率的に株数を稼ぐことができるため、後半の株価回復期に大きな利益を享受できます。
現時点での株価が高いため評価額も高くなっているのかとも思ったのですが、そうでもありません。仮にシナリオ1(現実の世界)の現時点での株価が、シナリオ2並だったとしても、評価額は201,967ドルという高パフォーマンスです。
また驚くべきことに、シナリオ1ではまだ株価がリーマン・ショックから回復しきっていない2009年7月時点で、すでにシナリオ2を積立合計額では上回っています。
この時点でのVTI株価は46.5ドル、投資家デビューしたリーマン・ショック前の08年9月の65.4ドルから大きく下回っているのにも関わらずです。理由はシンプルで、株価が底値となる30ドル台を記録した09年3-4月にしっかりと株数を確保できていたからです。
ドルコスト平均法の強み
シミュレーションで示されたように、今後またさらなる暴落相場が訪れる可能性があると思うなら、最適な投資行動はドルコスト平均法で積立投資を始める/続けることではないでしょうか。
暴落のタイミングを狙って都合よく株を仕込むなんてことは、未来を正確に予想できない私たちには出来ません。
しかし未来を信じて、ドルコスト平均法で投資を続けることは可能です。
この戦略は、数十年後の未来を信じることができる、20代30代の一般投資家の特権です。短期で利益を出さなければならない機関投資家や、近いうちに出口戦略(投資資金の現金化)を考えなければいけないシニア投資家とは違います。
ドルコスト平均法で耐え続ければ、暴落はむしろメリット
特に投資期間を長くとれる、若者にふさわしい戦略
ドルコスト平均法のリスク
長期的な株価低迷
例えば、リーマン・ショックから米国株は10年で十分な回復をしましたが、これが10年経っても回復せず低迷し続ければ苦しくなります。
ただこれまで米国株はこれまでずっと、2,30年スパンでみれば力強い成長を遂げています。米国の人口構成は、日本や中国のように少子高齢化の課題はなく今後も人口は増えていくと予想されており、経済もそれに伴い成長していくと予想されます。
もちろん、短期的には景気変動の波を受けることがあるでしょうが、傾向としては成長し続けると私は考えています。また私たちミレニアル世代の投資家は、2,30年間待ち続けることが出来るという圧倒的な強みがあります。
なので私たちにとっては、この長期的な株価低迷リスクは低いと考えます。
バブルに乗り遅れる
仮に来年早々に株価が急騰したとします。その場合、のんびりとドルコスト平均法で積立投資をしてしまっていたら、その恩恵を享受することは出来ません。
いますぐに投資可能資金を全力投入するのが、もっとも良い戦術です。
ただ全力投入してしまうと、株価が急騰せずに急落した場合のダメージは大きいです。
次の暴落相場への準備
ミレニアル世代の一般投資家には、ドルコスト平均法が最適解と考えます。
数十年スパンでの長期的な株価上昇を信じられるのであれば、次の暴落相場もむしろ絶好の買い場です。底値で一気に買う判断は難しいと思いますが、予算の範囲内で買い続けることが誰でも出来ます。耐えて信じる気持ちさえあれば。
先行き不安定な時代でありますが、私は未来を信じてドルコスト平均法を続けてみたいと思います。
「確定拠出年金」や「つみたてNISA」は、ドルコスト平均法に沿った投資に最適な非課税制度です。うまく活用して、人生100年時代に備えたいですね。
投資は自己責任にてお願いします。