就活のインターン志向は年々高まっているようです。
私が大学生だった時よりも、広がっている印象があります。当時インターンに参加するのは「やや意識高めの層」が中心でしたが、今や就活生なら何かしら参加して当たり前という感もあります。少しインターンに関して過熱しすぎかなという印象です。
就職活動をしていると、インターンの参加に関して色々悩むと思います。
『インターンって意味あるのかな?』
『何社くらいのインターンの参加したらいいんだろう?』
そこで、学生時代にインターンに2件ほど参加し、社会人として数年間働いている経験をもとに、インターンの意味合いについて考えてみました。
1.志望業界に向けたキャリア形成
意味合い:非常に大きい
インターン自体が選考プロセスの一部だったり、どうしても行きたい企業や業界が固まっていて少しでもその現場に近づきたいというケース。
冒頭のAERAの記事で紹介した、「将来AbemaTVで働きたくて、大学2年生ながら担当者に掛け合って、本採用に潜り込む形でサイバーエージェントに、本来募集のない長期インターン生として参加した早馬さん」のようなケースです。
これほどの確固たる決意とバイタリティがあれば、何も悩むことはないでしょう。
また、幾つかの選択肢で迷っている時に、インターン生として現場の社員と数日間一緒に働いて、そこで働く環境を見極めることも非常に有意義だと思います。
社員同士が職場で話している雰囲気(かしこまった会話ばかりか、雑談も交えながら気軽に議論できる環境か)や、机の配置や会議室のつくりといったオフィス環境が自分にしっくりくるかどうか等、働き方に関する価値観を知れることは、インターンの醍醐味の一つです。
(本当はすべての就職活動で現場でのインターンを取り入れられれば、学生と企業とのマッチングがもっとうまくいくと思います。企業としては、コストが嵩み難しいのでしょうが。。)
ただ自分の将来がまだ明確には固まっていない中で、インターンに参加すべきか悩むケースもあると思います。次に示す2、3のような意味合いを期待するケースです。
2.就活生としての箔付け
意味合い:あまり大きくない
インターンに参加しておいた方が、就活生としてランクアップできそう。インターンに参加した経験自体が、別の会社の就職活動に有利になるのではという期待です。
結論から言うと、私はこの意味合いはそれほど大きくないと思っています。仮にマッキンゼーのインターンに参加したからといって、多くの場合他社の面接で有利になることはないでしょう。
インターンで企業の中で働いた経験は、社会人からみるとそれほど差別化はできません。企業で働いた経験は、学生の間ではレアですが、社会人にとっては全然レアではないからです。
それよりも、就職活動において最も重要なことの一つは、「自分が大切にしていることや、自分が人よりも得意なことを十分に認識した上で、その企業で働くメリット(企業・自分自身双方にとって)をイメージできていること」だと思います。
この「自分が大切にしていることや、自分が人よりも得意なこと」を知るには、2つの視点から自分のポジションを認識することが重要です。
a)自分の中での相対価値を知る
中学生向けの塾講師、引越し屋さん、超高級レストランでのアルバイト、あるいは海外旅行やボラティア活動など、なんでも良いので自分の価値観とは違う世界を経験することで、自分が大切にしていることを知るヒントが得られると思います。
b)社会の中での相対価値を知る
またゼミやサークルなど、一つの世界でどっぷり活動することで、自分が人よりも得意なこと;自分では簡単に出来るのに周りから重宝されること、他の人よりもアウトプットの質が高い分野がわかってくると思います。
こうした「自分が大切にしていることや、自分が人よりも得意なこと」を知る一つの機会として、インターンに参加してみるのは良いと思います。ただ多くの場合、インターンよりも普段の学生生活の中により有益な機会が溢れているように感じます。
なんとなくインターンは価値のありそうなものだという認識のもと、インターン先でやりがい搾取にあってブラックな働き方をして貴重な時間を無駄にしてしまう、なんてことにならないようよく考えてみてほしいと思います。繰り返しますが、普段の学生生活の中により有益な機会が溢れています。
3.あえて他業界を学ぶ
意味合い:割とある
社会人になると、取引先としてさまざな企業と接する機会は多々あります。
ただし内部の者として企業と接する機会はそうそうありません。
2日間以上のインターンであれば、割と内部の人間として企業に入り込むことができます。そこでとても重要なのが、「組織の空気感」を知れることです。
社会に出ると、どうしても世間の常識よりもそのコミュニティの常識に染まりがちになります。大企業でもフリーランスでも専門職でも同じです。そこで自分の所属している組織以外の「組織の空気感」を知っていることは、業務上での判断や自分自身の身の振り方を考える上で重要な資産です。
それを知るためには、インターンは案外貴重な経験です。数日間開催のインターンに2、3件参加すれば十分だと思います。受入先の企業に失礼にならないよう、うまくインターンを活用してみるのは良いと思います。
ただそれ以上に力を割くのは、一度立ち止まって考えてもいいかもしれません。
上述の、中学生向けの塾講師、引越し屋さん、超高級レストランでのアルバイトなどを通して身につけられる、自分の所属している組織以外の価値観を知っていることも、業務上での判断や自分自身の身の振り方を考える上で重要な資産です。
また大学生の期間は、「役にたつかもしれないし、役に立たないかもしれないこと」について学べる人生でも数少ない時期です。社会人になると「役に立たないかもしれないこと」を学ぶ機会が、一気に減ります。そもそも業務に追われ「学ぶ機会」自体が限られますし、限られた時間の中でも「役に立つこと」しか学べなくなります。
案外こうした「役にたつかもしれないし、役に立たないかもしれない」知識や教養が、組織の中で自分の価値を差別化できる重要な要素になったりします。
結論:インターンに、意味あるのか?
個人的にはインターンについてやや過熱気味であると感じています。
目指すキャリアに近づくインターンに参加したり、経験として幾つかの(できれば数日間開催くらいの)インターンに参加したりすることは、意義深いと思います。
ただとにかくインターンに行かないと!という姿勢には慎重です。
普段の学生生活の中にも、就活や社会に出てから使える有益な機会が溢れています。当時の私も含め、多くの大学生はその機会の価値を低めに見積もりがちだと思うので、インターンに限らずに、身の周りの機会を活用してみて欲しいと思います。