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イチロー選手の引退会見に学ぶ「誠実さ」の秘訣

イチロー選手の引退会見は、誠実さに溢れていました。

メディアの前では寡黙であまり多くを語らない印象でしたが、先日の会見では一つ一つの質問に真正面から「誠実に」向き合って答えていました。また会見を通して、いかに真摯に野球に取り組んで来たかが、ひしひしと伝わりました。

MLBを代表する成功を収めた要因の一つは、この「誠実さ」だと思います。

イチロー選手の引退会見を振り返り、その「誠実さ」を紐解いて私たちが学べるエッセンスを掴みたいと思います。

誠実さはビジネスでの成功の鍵

スポーツ選手に限らず、ビジネスやアートなど様々な世界で成功を収める人やお金持ちの人の特徴の一つが「誠実さ」だそうです。ビジネスオーナーやエグゼクティブに、ビジネスで成功する秘訣を聞いたところ、第一位が「誠実さ、信用」だったというアンケート結果もあります。

誠実さが重要視されるのは、2つの側面があると思います。

誠実に取組むこと自体が、好成績を生む

イチロー選手といえば、幼い時から1年中バッティングセンターに通い続けていたエピソードが有名です。このように誠実に野球に取り組んできたことが、プロ通算4,367本安打という偉大な成績を生み出したのでしょう。

当たり前のことですが、ビジネスや他分野でも同様に、知性や行動力をフルに発揮して誠実に取り組み続けることで、偉大な成果が生まれるものです。

誠実に取組む姿勢が、周囲に好印象を生む

またイチロー選手はその偉大なる成績は勿論のことながら、野球に取り組む姿勢も周囲のメジャーリーガー達からの尊敬を得ています。同じような好成績を収めていたとしても、日頃の振る舞い次第では好印象を得られたか分かりません。

ビジネスや他分野でも同じだと思います。一例としてリーダー論に関する記載を引用しますが、同僚や取引先、社会と向き合う姿勢についても同じだと思います。

リーダーになるためには、従う者の存在が必要だ。そのためには、彼らの信頼を手に入れなければならない。だからこそ、リーダーにとっての至高の資質が誠実さであることは、論を待たない。誠実さがなければ、現実に成功する可能性は全くない

『あなたがリーダーに生まれ変わるとき』ジョン・マクスウェル

あなたがリーダーに生まれ変わるとき―リーダーシップの潜在能力を開発する

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一流の誠実さとは何か? それをどう身に付けていくのか?

会見の中で、特にイチロー選手の誠実さを感じたポイントを幾つかの引用し、その秘訣を考えていきたいと思います。

いま出来ることと、いま出来ないことが明確

記者:

開幕シリーズを大きなギフトとおっしゃっていました。それが私たちの方が大きなギフトをもらったような気がするんです。イチロー選手は、これからどんなギフトをくださるんでしょうか。

イチロー:

ないですよ。そんな無茶言わないでくださいよ。

これから先、イチロー選手からファンに与えてくれる”ギフト”は何ですか?

という記者からの問いに対して、間髪入れずに「ないですよ」と爽やかに返答される姿が印象的でした。

これまで小さい頃から全身全霊を込めて取り組んできた野球に一区切りをつけたいまこの瞬間に、その野球と同じクオリティで提供できるアウトプットなんて無いということでしょう。一つの仕事をやりきった自負のある人にしか言えないメッセージです。

リップサービスで、指導者を目指したいと答える選択肢もあったかと思います。しかしありのままに今の思いを伝える姿勢に、誠実さを感じました。

小さなやり取りの中にも、野球に取り組んできた「誠実さ」とインタビュアーに対する「誠実さ」が伺えます。 

積み重ねでしか、自分を超えられない

イチロー:

人より頑張ることなんてとてもできないんですよね。あくまで測りは自分の中にある。それで自分なりにその測りを使いながら、自分の限界を見ながらちょっと超えていくということを繰り返していく。そうすると、いつの間にかこんな自分になっているんだという状態になって。


だから少しずつの積み重ねが、それでしか自分を超えていけないと思うんですよね。一気に高みに行こうとすると、今の自分の状態とギャップがありすぎて、それは続けられないと僕は考えているので。地道に進むしかない。進むというか、進むだけではないですね。後退もしながら、あるときは後退しかしない時期もあると思うので。でも、自分がやると決めたことを信じてやっていく。


でも、それが正解とは限らないわけですよね。間違ったことを続けてしまっていることもあるんですけど。でも、そうやって遠回りをすることでしか本当の自分に出会えないというか、そんな気がしているので。

私にとっては、この会見の中で最も印象に残り、これから自分自身に投げかけ続けていきたいと思った名言です。

イチロー選手ほど誰よりも努力しているであろう人が、「人より頑張るなんてとてもできない」と言っています。だから一歩ずつ進むしかないと。

さらにそれに留まらず、一気に高みに行こうとすると続かない、時には後退する、時には努力の方向性すら違う、でもそれを含めて、誠実に自分なりに正しいと思うことをし続けることが秘訣だと語っています。

イチロー選手ほどの結果を残された方でも、遠回りしながら本当の自分、最高の自分の姿を追い続けていると感じています。このことは私たちにとって大きな励みになるとともに、「誠実に取り組むこととは何か」を教えてくれているように思います。

自分自身が努力を重ねても成果を出せない時、壁に当たった時に思い出したいメッセージです。あのイチロー選手でさえ、時に後退したり間違った方向に進みながらも、誠実に愚直に努力し続けてきたんだというのは、誠実に努力し続ける人への最高の応援になります。

誠実さは、言葉の正確さに現れる

記者:

野球に費やしてきた膨大な時間、これからそういう膨大な時間とどういう風に付き合いますか。

イチロー:

これからの膨大な時間ということですか。それとも、これからの膨大な時間とどう付き合うかということですか。

会見で印象的だったのが、こちらのやりとりもそうですが、イチロー選手が極めて精緻に言葉を綴っておられたことです。会見の雰囲気は和やかなものでしたが、イチロー選手は、要所要所で非常に言葉の正確さを意識した会見をされていました。

年代や記録の細かい数値や、選手名などについても、時折記者のコメントをさらりと修正して見せるほどでした。ハードな試合後にこれほどの集中力と記憶力を維持して会見に臨んでおられる姿勢は、圧巻です。

会見と野球のプレーとは直接は関係ありませんが、この誠実な会見ぶりを通して、イチロー選手がいかに誠実に野球に向き合ってきたか改めて実感しました。

”神は細部に宿る”と言われます。

プレゼンテーションや就職のインタビューなど私たちが人前で話す際にも、今回の引退会見の精緻な話ぶりから学ぶことは多いと思います。

飾らずありのままの自分と向き合う

イチロー選手というのは、ただただストイックな人という印象でした。

ところが今回の会見を聞いて、人間らしい一面もありながら、そんな自分としっかり向き合って野球に取り組んでいる人だと感じました。

こんなエピソードも印象的でした。

記者:

一番我慢したものは。

イチロー:

難しい質問だなあ。僕、我慢できない人なんですよ。楽なこと、楽なことを重ねているという感じなんですよね。(略)家では妻が料理をいろいろ考えて作ってくれますけど、ロードは何でもいいわけですよね。むちゃくちゃですよ。ロードの食生活なんて。  

常に朝はカレーライスを食べていると思っていましたが、むちゃくちゃなんですね。

ただそんな自分をしっかり認識しつつ、自分を最大限コントロールされています。無意識にルーズな食生活をしている選手と、ロードではルーズな食生活になってしまうことを自覚しているイチロー選手では、同じルーズな食事を摂っていてもそれ以外の行動に雲泥の差が生まれると思います。

自分自身のルーズな部分(イチロー選手の場合は食生活)をしっかり認識するがゆえに、ホームでの食生活を律したり、食事以外の面でのコンディション調整でそれをカバーしようという意識が働くからです。 

POINT

・自分が今できることに全力で取り組む

・遠回りでも前に進み続ける

・神は細部に宿ることを自覚する

・自分の弱点やルーズな部分にも向き合う

こうしたポイントを押さえながら、真摯にありたい姿に向かい続ける姿勢こそが「誠実さ」であり、成功を掴む秘訣だろうと思います。

イチロー選手の引退会見は、こちらで全文を読むことができます。私たちが「よく働き・よく稼ぐ」うえで、非常に参考になるインタビューです。これから何度も読み返したいと思います。