勉強でも仕事でもスポーツでも、「集中力」は良いパフォーマンスを生む要件の一つです。
ただ思い返すと「集中力を高めたい」と思っている時は集中できていない時で、本当に集中している時は無意識にその状態になっていることが多いような気がします。
いかに無意識に集中できる状態を作るかが、成功の鍵だと思います。
大学受験のとき、資格試験のとき、仕事で新企画を考えるときなど、人生のあらゆる場面で極限の集中力を発揮したいと考えていました。
どうしても気が乗らず「集中力をあげるライフハック術」を読み漁ったこともあります。実際ライフハック術を読むのは、罪悪感の少ない気晴らしの側面も大きいと思います。
こうして10年以上にわたり集中力を高める方法を試し続けてきたことで、無意識に最高の集中力を発揮できる習慣が分かってきたので、この記事で紹介したいと思います。
- 強い意志の力がなくても出来ること
- 特別なガジェットが必要ないこと
- 自然にずっと続けられること
ポイントはこの3つです。
集中力を維持しやすい状態に自分自身をアップデートできる習慣を身につけることです。
意思の力や努力に頼らず、集中できる環境を作りだすためのヒントになると思います。
時間術 X 集中力
1)自分にエネルギーを与えてくれる仕事を必ず把握する
仕事でも勉強でも没頭できて進めるほど自分のエネルギーが湧いてくるものと、逆に進めるほど消耗してくものがある。「自分にエネルギーを与えてくれる仕事」を定期的に挟むと、1日の集中力をうまくコントロール出来る。そういった仕事は、仕事以外でのストレス解消よりもリフレッシュ効果は大きいし罪悪感も全くない。
何が自分にエネルギーを与えてくれるのか把握することはとても重要。どんな仕事が自分にエネルギーを与えるか分からないという方は、以下の仕事タイプを参考にしてみて欲しい。ちなみに私にとっては、タイプAとBの組み合わさった仕事が一番エネルギーを与えてくれる。
タイプA :主体性を発揮できる仕事
タイプB :難度が高い挑戦的な仕事
タイプC :評価に直結する仕事
タイプD :コミュニケーションを伴う仕事
エネルギーの源が分かれば、次は時間配分。理想は自分のスイッチを押してくれる仕事を100%にすることだが、どんな仕事に就こうがフリーランスになろうが消耗させる仕事をゼロにするのは難しい。なのでエネルギーを与える仕事の割合をキープ出来ているか、1日・1週間の中で適切なバランスを保てているか、都度振り返る習慣を持つと良いと思う。
2)自ら締め切りを設定する、たとえ見通しが立たずとも
テスト前に必死に勉強した記憶は、多くの人にあると思う。その力を活用しよう。外資コンサルに勤務する友人は「毎日がテスト前みたい」と語っていた。彼らが深夜まで働き続けても集中力を維持する要因の一つは、毎日ボスから振られる膨大なミッションをこなしそれを評価される環境にあるのは間違い無いでしょう。
毎日ボスに叱責されるのは御免かもしれないが、定期的に上司や同僚ときに後輩にフィードバックをもらう機会を設定し、自分で締め切りを設定するのは本当におすすめ。その時、○日後には完了するだろうという明確な見通しが立っていなくても、まず締め切りを設定することで自分自身に適度なプレッシャーをかけること。自分で締め切りを設定すると、多少無理目な計画でも案外それに向かって頑張れるもの。さらに他人に設定されるよりもストレスはかからない。
まずは1週間単位くらいで、締め切りを設定してみるといい。定期的に締め切り直前の極限の集中力を味わうことが出来る。締め切りの間隔が1日・1週間あるいは1ヶ月単位がいいかは、気力・体力や業務スタイルによって違うと思うので、自分にあったものを見つけて欲しい。当然サイクルが短い方がハードモード。
3)初日にアウトプットを仕上げる、突貫工事でいい
10日後の締め切りに向けてテーマを進めるとき、毎日1/10ずつ進めるのではなく、初日に大まかな成果物を先に作り上げることも集中力を発揮するためのコツのひとつ。当然初日に出来ることは限られていて穴だらけの成果物になると思うが、その穴がポイント。先に穴を作ることで残りの9日間は、その穴を埋めることに集中できる。2と共通するマインドだが、穴があれば埋めたくなる、締め切りがあれば間に合わせたくなる、人間の本能を利用するのがオススメ。
4)時間を区切る|ポモドーロテクニック
次はもう少し細かい単位での時間の使い方を紹介する。
「ポモドーロ・テクニック」という言葉を聞いたことがあるだろうか。仕事や勉強、家事などのタスクを25分間続けた後に5分の休憩を取り、そのサイクルを最大4回続けるという時間管理術のことだ。
ポモドーロ・テクニック:世界が実践する時間管理術はこうして生まれた | キャリア | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
職場にキッチンタイマーを持ち込むのは難しいかもしれないが、30分単位で会議室を抑えて自分専用の集中スペースにしたり、お気に入りのタイマーアプリや砂時計で時間管理をするのもおすすめ。
5)メールの返信時間を固定する
私の上司は早朝にしかメールを返信しない。昼間送ったメールも夜送ったメールも、次の日の早朝に返事がくる。早朝に送信すれば、すぐに返信がくる。このスタイルも慣れてしまえば全く気にならない。上司曰く都度メール対応に集中力を奪われることがなく、快適に集中力を維持できるらしい。
マッキンゼー・グローバル・インスティテュートの2012年の論文によると、「普通の知識労働者は労働時間の28%をメール管理に費やしている」という。少し古いデータだが感覚的に当時と今で違いはないし、むしろslackなどチャットツールが増えた分だけテキストメッセージに対応する時間は増えているように感じる。
1日に何度もメールを確認し都度対応するたびに集中力が削られる。私の上司のように早朝のみをメール対応時間にすれば、日中メール対応に追われることはない。ここまでするのは極端と思う方も、1日数回決められた時間(例えば10時と16時)だけにメール対応を限定するだけでも、集中しやすい環境を作ることが出来る。
6)作業を4分類し、それぞれに最適な時間帯を把握する
作業の特徴ごとに、自分が一番集中できる時間帯(クロノタイプ)を見つける。
私の場合、頭の澄んだ朝の時間はクリエイティブな仕事が捗る。少し時間が経つと、1点集中が必要となる高度でミスの許されない仕事が捗る。夕方になると、淡々とこなす仕事が捗る。そういった仕事を朝にしてしまうと逆に気持ちがめげるので、夕方が良い。
個人差があると思うので、このマトリクスを参考に自分の作業の棚卸をして、どの作業をどの時間帯に進めていた時が無意識に集中できていたか思い返すのがおすすめ。
7)1日を最高の幸福感で満たしてくれるイベントを用意する
1日単位で締め切りを設定するのも良い。飲み会などなんでも良いので、仕事終わりに楽しみな予定を設定しておくと、そこに向けて集中力が増す。
個人的なおすすめは、平日仕事終わりの映画館。平日の映画館は空いていて、予約せずとも良席で快適に鑑賞できることが多い。仕事を終えた後に映画も観て家に帰ると、1日の満足度がすごく上がったように感じられる。私自身とりわけ映画好きではないけれど、この1日を2度味わうような充実感がかなり好き。
ただ飲み会や映画のような時間が固定される予定だと、間に合わなかった時のストレスが大きい。突発的な案件が多く、業務終わりの時間が読みにくい方にはあまり勧められない。
栄養学 X 集中力
8)体内のカフェイン濃度を制御する
ハーバード大学のチャールズ・ツァイスラーらの研究によると、疲労を取り除き、認知機能を改善しイライラを避けるのに最適なコーヒーの飲み方は、1時間おきに少量ずつ(60ccくらい)飲むことだという。
ちょうど8時間かけて500mLのペットボトルコーヒー1本を飲み干すペース。カフェインが一定の血中濃度に保たれるようコーヒーを点滴注入するイメージ。
カフェインが集中力に寄与するエビデンスは多数あるので、うまく味方につけたい。
9)水を飲む
水を飲むだけで集中力が高まるという研究結果もある。
私も机の脇に常にミネラルウォーターを置いて作業するようにしている。
水を飲む程よいナチュラルな刺激と、喉の渇きを感じずに一定のリズムで作業に集中できる感覚が心地よくて病みつきになる。
10)ランチの意味合いを明確にする
同僚とワイワイ話しながらランチをすることで午後のパフォーマンスが上がると語るCEOもいる。朝食をたっぷりとって昼食の量を減らし(あるいは食べないで)午後の仕事を続け集ることで集中力を維持するというCEOもいる。
小学校の給食のように、決まった時間・量・スタイルでランチをとる必要は全くない。
漫然とランチをとるのではなく、周りや慣習に流されず、何が自分にとってベストなランチスタイルか一度考え試してみるのがよい。
外部環境 X 集中力
11)環境音をコントロールする
作業に集中する上では、雑音は極力減らしたい。誰かが電話で話している声や何かのアラーム音は、無意識のうちに自分の脳のメモリーを消耗させる。
ノイズキャンセリングイヤホンや耳栓で環境音をコントロールするのがおすすめ。
大学の研究室にいた頃、教授は1日中BOSEのノイズキャンセリングヘッドホンを着け集中力を維持していた。
さすがに普通の職場では目立ちすぎる気もするが、リモートワーク時は良いと思う。カフェや自宅で勉強する時も、ノイキャンの威力は絶大なので本当に試してみて欲しい。
この上ない集中力を発揮できる上でに、頭の疲労感も軽減される。
私自身さほど雑音を気にしないタイプだと思っていたのだが、人は雑音を処理することに無意識のうちに神経を使っているようだ。
BOSE NOISE CANCELLING HEADPHONES 700 ワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホン Amazon Alexa搭載 トリプルブラック
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- メディア: エレクトロニクス
12)観葉植物をデスクの近くに置く
350人のオフィスワーカーを対象にした実験で、観葉植物を前にしながら作業した被験者は作業効率が38%もアップしたという研究がある。おまけに幸福感も47%高くなったとか。
オフィスで目に見えるところに観葉植物が置かれている方は本当にラッキー。
そうでない方も、デスクに小さな観葉植物を置くのがおすすめ。
植物を置けない場合も大丈夫。”偽物の自然”でも効果はあるらしい。
私も自分のデスクにグリーンなものを置いて自然を感じられる環境をつくっている。
個人的には人工芝のデスクトップスタンドがかなりおすすめ。常に視界に緑なものが入ることで公園で作業している気分になって、自然と集中できる。ディスプレイ以外にもちょっとした書類や小物を置く棚としても使える。
13)室温を21-25℃に制御する、難しければ機能性ウェア
Seppänenらの研究によると室内が21-25℃であれば集中力を維持できるが、それより暑くても寒くてもネガティブな影響があるそうだ。自宅であれば室温は制御できるが、オフィスやカフェでは難しい。なので寒いときはヒートテック、暑いときはエアリズムといった機能性ウェアを活用して欲しい。ユニクロのおかげでこれほど機能性の高いウェアを激安で買えるのは、日本の強みだと思う。
" 涼しいフィルターを着ているみたい "
これはユニクロのエアリズムのコピーだが、まさにその通りだと思う。
インナーシャツはもちろん、トランクス・ブリーフも履き心地は抜群。3-5倍の値段がする高級下着と比べても全く遜色ない。
14)リモートワーク環境を整備する
COVID-19の影響もありリモートワークが急速に普及している。
自宅がリラックス・団欒するためだけの場所ではなく、集中して作業するための場所にもなっている。自宅を快適な作業環境にするアイテムをこちらの記事で紹介している。
15)まさかカビのいる環境で作業していないか
カビはマイコトキシンという有害な物質を生成する。マイコトキシンに晒されると、頭のモヤモヤ感や認知機能障害、疲労感に苛まれる。
これを避けるためには、カビっぽい環境を徹底的に避けること。よく換気する、引越しの部屋選びや職選びの際に注意するなど、個人で出来ることは限られているが、ぜひ気にかけたい。
休息 X 集中力
16)リモートワークの時こそパワーナップ
昼寝が最高の集中力を生むという研究は多数ある。
例えば、運転シュミレータで単調な運転を1-2時間続けて眠気に襲われている被験者に対して、15分以下の仮眠を取ったもらっただけで、刺激への反応時間が短くなり、運転技能の低下が抑制されたらしい。
この15分の仮眠による効果はコーヒーを2杯飲んだ効果に匹敵するそうだ。NASAもパイロットを対象に同様の研究結果を示している。
とはいえ中々職場に昼寝環境は整ってこない。お昼休みにデスクで15分パワーナップをするのは仕事の生産性を高める素晴らしい行為だと思うが、気まずく感じるかもしれない。
リモートワークで、堂々とパワーナップして欲しい。
(職場でも後ろめたく感じる要素は何一つないと思うが、)まずはリモートワークで昼寝(”パワーナップ”と呼ぶ方がよりポジティブだと思う)の効果を実感して欲しい。
17)一瞬、姿勢を正すだけでも良い
良い姿勢が高い集中力を生む。
これも分かっちゃいるけど、中々できないことの一つだ。
たまに良い姿勢で作業しようと気合いを入れても、自然に猫背になったりおかしな姿勢になってくるものだ。
それでも心配不要。1日に何度か姿勢を正すだけでも、その行為自体で人の集中力は増す。
ずっと良い姿勢を保とうとすると荷が重いけど、たまに気付いた時に背筋を伸ばすくらいなら誰でも出来る。私もずっと実践しているラクで体感も大きいおすすめテクニック。
18)瞑想は脳の筋力トレーニング
2012年に発表されたEileen Ludersらの研究によると、瞑想をすることで脳の外層のひだが増えるらしい。
瞑想のメリットはよく聞くが、身体の構造にまで影響を与えていることは知らなかった。脳にひだがあることで、ニューロン同士をより密集させ情報伝達を高速化し、一度に多くの情報を処理できるようになると言われている。
瞑想することで、筋トレをするように身体が変化し、脳がアップグレードする。
瞑想が単にスピリチュアルな行為ではなくて、より科学的なものに感じられる。
19)良質な睡眠を確保する
「睡眠の質を高めたい」と誰しもが考えることだが、なんだかんだ睡眠の満足度を高める最大のファクターは睡眠時間である。起きる時間が決まっているなら、身も蓋もない話だが早く寝ることに尽きる。
●寝つきを良くするために、夜の照明は暖色/電球色にし、スマホを見ない
●リラックスして眠るために、なるべく大きなベッドで眠る
(これから一人暮らしを始める方は、騙されたと思ってセミダブルやダブルベッドを購入してみて欲しい。高いマットレスを買うより、値段あたりの満足度は高い。保証する。)
上記のような睡眠の満足度を上げるテクニックは幾つかあるが、どうにかして睡眠時間を確保することに勝るテクニックはないと思う。
20)身体の不調に対しては医学を活用する
パナソニックの調査によると、花粉症による労働力低下の経済損失額は1日当たり約2215億円らしい。私も花粉症に悩まされている。ただ薬に頼るとかなりラクになる。花粉症の薬を飲むと眠くなったり、口が乾くからいやだという方もいるかもしれないが、医学は日進月歩で進化している。
医学を活用するだけで集中力が戻るなら、こんなにありがたいことはない。医療費は国民の税金も賄われているが、その分仕事でパフォーマンスを発揮して経済を回そう。
21)高強度インターバルトレーニング(HIIT)
多くの方が実感しているように、運動が頭にとって良い休息になる。
運動が面倒な人でも短時間で出来て続けやすくて、しかも効果が高いのがHIIT。
やってみると意外にキツいが、自宅で週に数分するだけでよく私でも無理なく続けられた。脳にとっては良い休息になる。準備時間も含めた時間効率では圧倒的にNo.1だと思う。
HIITとは……
HIIT(High Intensity Interval Training)は、全力の運動と少しの休憩を限界まで繰り返すトレーニング法。立命館大学の田畑泉教授が有用性を研究して論文として発表した。スケート日本代表選手の強化のために生まれ、「20 秒間の高強度運動+10秒休む、を8回行う」というメソッドが「TABATAプロトコル」として世界で話題に。
人生観 X 集中力
22)人生にとって最も重要なことは何か問う
心理学者エリクソンの研究によると、乳児期から青年期、老年期に至るまで、人の心には8つの発達段階があるらしい。今この瞬間、自分の人生に一番大切なことが何なのかふと確認する上でヒントを与えてくれる。
いま一番大切なことを知れば、何に集中力を発揮すべきか分かる。
23)memento mori
ラテン語で「死を忘れるな」の意。常に死を意識して生きること。故スティーブ・ジョブズも「毎日を人生最後の日だと思って生きよう。いつか本当にそうなる日が来る」と語った。少し大げさかもしれないが、頭の片隅にmemento moriを置くことで、物事に対する集中力もまるで変わってくる。私も身近な人の死や大きな病気をきっかけに、強く意識するようになった。
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最高の集中力を発揮できる状態は、well-beingを満たす一つの条件だと思います。今回紹介した23の習慣のうち、一つでも本記事を読んでいただいた方のヒントになれば幸いです。
【参考図書】