本記事は、仕事のパフォーマンスと体内時計に関する記事です。
ビジネスパーソンは、自分の体内時計(クロノタイプ)を把握して、今後もっと快適に働くためのヒントを見つけるのがおすすめです。特に在宅でリモートワークをする時は、自分の本来のクロノタイプを知るのに良いタイミングです。
基礎研究/歴史/ビジネス応用の3つの視点から、社会人に向けたクロノタイプ診断とその活用方法を紹介します。
体内時計に関する基礎研究
24時間リズムの体内時計は、生命に遺伝子レベルで刻み込まれていることが分かっている。睡眠-覚醒のサイクルだけでなく、体温や血圧、ホルモン分泌など様々な身体機能が影響を受けていることが知られている。
朝が来ると血圧と心拍数が上がり始め,昼には血中のヘモグロビン濃度が最も高くなります。夕方には体温が上がり,夜には尿の流出量が多くなります。真夜中には免疫を担うヘルパーT細胞の数が最大になり,成長ホルモンがさかんに分泌します。こうした周期のことを,サーカディアンリズム(概日リズム)と呼びます。一般には「体内時計」と言ったりもします。
引用:日経サイエンス
時間生物学は、非常にトレンドな研究分野で2017年のノーベル生理学・医学賞は、体内時計を生み出す遺伝子機構を発見した米Jeffrey C. Hall博士、Michael Rosbash博士、Michael W. Youngが受賞している。
過去の偉人たちのタイムマネジメント
研究に裏付けられていた訳ではないが、ビジネス・芸術などで大きな成果をあげた偉人たちは「仕事のパフォーマンスと体内時計」をよく把握し、それに従うことで最大級のパフォーマンスを発揮していたようである。
時計遺伝子が発見される前から、偉人たちはその存在を肌で認識してタイムマネジメントをしていたようだ。ブラッド・スタルバーグ/スティーブ・マグネス著『PEAK PERFORMANCE』に次の記述がある。
重要なのは、歴史的な偉人たちが1日のうちで生産性が高い時間帯に仕事をしたことでも、仕事がはかどる時間帯があることでもない。彼らが1日のうちで最も集中力と注意力が高まる時間帯を認識し、それを基にして1日の過ごし方を決めたことだ。
彼らは、自分が夜型か朝型かを認識したうえで、1日を最大限に有効活用したのである。
人それぞれに合ったベストな時間帯はあるからそれを見つけたもん勝ちということ。
その時間帯を見つけるヒントが、クロノタイプ診断。
科学的に信頼性の高いクロノタイプ診断
Webサイトでよく見かけるものの、サイエンスの論文ではほとんど見かけないクロノタイプ診断も多い。(一つのエンタメ的な読み物としては否定しませんが・・)
そこで本記事では、時間生物学の研究でよく用いられる、より信頼性の高いクロノタイプ診断2つを紹介する。科学的な検証に用いられるクロノタイプ診断であり、信頼できる評価手法である。ご自身が本当は朝型なのか、夜型なのか知るヒントになる。
Horne-Östberg 朝型夜型質問紙
特に有名なものは、1970年代に開発されたHorne-Östberg の朝型夜型質問紙。
Morningness -Eveningness Questionnaire (MEQ)
精神的にたいへん疲れるうえ, 2時間もかかるとわかっているテストを受けて,最 高の成績をあげたいとします. 1日のスケジュールを本当に思い通りに組むことができ,あなたの体調が最高と思われる生活リズムだけを考えると,次のうちどの時間帯を選びますか.こういった質問に回答して計算することで、自分のクロノタイプが朝型なのか夜型なのか5段階で診断できる。仮定に基づく質問も多いので、少し答えにくいかもしれない。(1) 午前8時-午前10時(2) 午前11時-午後1時(3) 午後3時-午後5時(4) 午後7時-午後9時
ミュンヘンクロノタイプ質問紙
近年、研究での利用も増えているミュンヘンクロノタイプ質問紙( Munich ChronoType Questionnaire: MCTQ)は、答えやすい。Webで5分ほどで簡単に診断できるので、興味のある方は試してみてほしい。
朝活に励んでいるけど実は朝型だったとか、夜残業してる時こそ仕事が捗ると思っていたら実は朝型だったとか、意外な発見があるかもしれない。
ビジネス向け 業務別クロノタイプ診断(実践編)
次はさらにビジネスに応用しやすい、踏み込んだクロノタイプ診断を紹介したい。
例えば、自分が「やや朝型」だと知ったとき、朝に重要な仕事の予定を入れると思う。
では、昼以降の仕事はどうする・・・? 夜は・・・?
クロノタイプ診断で自分のパフォーマンスがピークになる時間帯を知ったとしても、私たちはそれ以外の時間帯を流すわけにはいかない。
そこでビジネスパーソン向けには、もう少し細かくクロノタイプ診断をすることを勧めたい。
作業を下表のように4分類して、それぞれの作業に最適な時間帯を自己診断してみて欲しい。
自分のペースで業務スケジュールを組み立てやすいのが、リモートワークの良さ。いま在宅勤務をされている方は、この4タイプの業務を様々な時間帯で試してみて、それぞれについて一番自分が心地よく/効率的に進められる時間帯を探し当てて欲しい。
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私の場合 ミュンヘンクロノタイプ質問紙:「やや朝型」
確かに体感としてもクリエイティブな業務については、頭の澄んだ朝の時間帯がよく捗る。
しかし1点集中を求められミスの許されない業務となると、どうも朝の時間帯は向かない気がする。頭のエンジンが回転すぎて、細かいステアリングの調整がきかないように感じる。少し時間が経って11-15時くらいになると、エンジンとハンドル調整のバランスがよくなって、より注意深くパフォーマンスを発揮できる。
淡々とこなす業務については、朝や昼間に行うと他のことを考えてしまい調子が出ない。経費精算などは、少し疲れた夕方くらいにこなすのが快適だ。
クロノタイプが朝型だからといって、全ての業務が朝にベストパフォーマンスを発揮できるとは限らないのである。
私の例のように、仕事のタイプ別にそれぞれ快適に進められる時間帯を見つけてみて欲しい。単にクロノタイプ診断で自分のピーク時間を知るだけではなく、業務内容ごとに時間を使い分けることでより生産性が高まる。夜型の方でも、朝や昼間にこそ効率的に進められる仕事があるはずだ。
リモートワークの今は、自分のペースで業務を進められる最大のチャンス。
周囲からの影響を排除して、ある意味で純粋に自分自身のクロノタイプの状態だけが仕事のパフォーマンスに与えている影響を知れる絶好の機会。
もちろん個人差はある。個人差だけでなく、自分自身も10年後には違うコンディションになっているかもしれない。それでも自分自身の今のクロノタイプを把握することは、とても意義がある。
まだ科学的なエビデンスで実証されたものではなく実践での経験に基づくものだが、体感では非常に意味合いを感じている。リモートワークの今こそ自分自身のクロノタイプを把握して、時間を思い通りコントロールする感覚を身に付けたい。
参考記事
クロノタイプを把握する以外にも、集中力を向上させる23のヒントをまとめています。
リモートワークで作業する時に便利な5つのアイテムを紹介しています。