琥珀色のブックエンド

well-beingの実現がライフワーク

国立大学の授業料とバイト代の推移

国立大学の学費とアルバイト代の推移をもとに、大学生の懐事情の変遷をみてみます。

バイト代と比較することで、週何時間バイトすれば年間授業料を賄えるのか、というデータも割り出してみたいと思います。

国立大学の授業料推移(1975-2019)

まずは年間授業料の推移を確認します。

1975年(昭和50年)の国立大学の学費は、36,000円だったそうです。

1975年というと、高度経済成長期が終わり安定成長期にシフトしていった頃ですね。

現在の学費は、標準額が535,800円なので、この45年で15倍ほど上昇しています。

ただ継続して上がり続けていた学費は、2005年以降は上げ止まっています。

f:id:millennial:20200523190618j:plain

なお国立大学の学費は全国一律、だったのは過去の話。

現在は、文部科学省が定める「標準額」に対して2割まで上乗せが認められています。

実際に、東工大・一橋大・東京医科歯科大・千葉大といった首都圏の大学では、上限2割増の年額64万円に近い学費が必要になっています。

新入学生の授業料引き上げは、すでに東京工業大学が19年4月に実施し、一橋大学も20年4月から取り組む。

東工大の水本哲弥副学長は「世界で戦える大学にならないと。例えばアクティブラーニングを進めようと思っても、大教室の固定の机の配置がネックになる。そんなこと1つでも変えようとすればお金がかかる」と話す。

一橋大は引き上げの目的を「グローバルに活躍する研究者や教育者を増やすため」と書面で回答した。

 引用:NIKKEI STYLE

2005年まではどの大学も一律で年2%程度アップしていて、そのペースで上がり続けていたとすると年額65万円となり、現在の東工大などの学費とほぼ同額です。

授業料と最低賃金を比較

授業料が上がっているのは、物価の影響もあると思います。

1975年当時の100円と、今の100円とでは価値が違います。

物価や賃金の指標は幾つもあると思いますが、本記事では大学生にとっても最もインパクトのあるであろう、バイト代の推移と比較してみます。

 

大学生のアルバイト代の指標として、最低賃金をみてみます。

こちらも1975年以降、授業料と同じように上昇傾向です。

違いは、2005年以降も横ばいとならず上昇し続けていることです。むしろ2005年ごろから上昇ペースは加速しています。

f:id:millennial:20200523195054j:plain

次に(国立大学の年間授業料)を(最低賃金;時給)で割った数値を検証します。

「年間どれだけ働けば、学費を稼げるか」を示す時間数の指標です。

1975年以降ずっと年間授業料の上昇ペースの方が早く、授業料を賄うのに必要なバイト時間数は増え続けています。

どんどん大学生の置かれる経済環境は、厳しくなっていたんですね。

ただ2005年からは、バイト代の上昇ペースが上回っており、必要なバイト時間数は幾分かは減ってきています。

年間授業料と最低賃金

1975年:年140時間バイト要

1975年は、年140時間ほど最低賃金でアルバイトをすれば、国立大学の授業料を賄えたことになります。

月になおすと12時間程度。週3時間バイトすればよかったんですね。

土日どちらか1回3時間のシフトに入れば稼げたわけです。学業とも十分両立できます。

今の60代くらいの方が「昔は授業料くらい自分で稼いだもんだ!」と声高におっしゃるのもよく分かります。当時は、週3時間働ければ良かった訳ですからね…

2005年:年750時間バイト要

この指数がピークだったのは2005年、年750時間必要でした。

週15時間バイトしないと学費を稼げないわけですね。

土日各7.5時間あるいは週3回5時間。学業とも両立はできますが、サークルなど学生生活も謳歌しようと思うとややハードですよね。

何より1975年比で5倍以上。正直この世代格差は厳しいなという感想です。

「授業料くらい自分で稼げ」の重みが全く違います。

2019年:年530時間バイト要

そして2019年は、年530時間となります。

近年の最低賃金上昇のおかげで、だいぶ必要時間数は減ってきています。

週10時間程度。週2回5時間くらいなので、学業やサークル活動などとバランスよく両立できそうな感覚です。

1985年頃と同じレベル感です。

感覚的ではありますが、個人的にはこのくらいが程よいなと感じます。

ちなみに学費の上がった東工大・一橋大などの場合、年635時間必要です。

2005年の水準よりはマシとはいえ、週13時間程度のバイトが必要になります。

地方都市での授業料・バイト代

まず東京都の最低賃金で計算していましたが、地方都市も調べてみました。

学生の街として知られる「京都」の場合、最低賃金は909円(2019)です。

国立大学の年間授業料を賄うには、年589時間必要です。

また全国で最も最低賃金が安い県は、「青森」「愛媛」「島根」「長崎」「沖縄」などの790円(2019)です。

これらの県では、必要なバイト時間は、年680時間となります。

POINT

1975年は週3時間バイトすれば授業料を稼げた

2005年は週15時間必要だった

2019年は週10時間必要

ただし青森などは今も週15時間以上必要

近年は上げ止まっているとはいえ、国立大学の授業料は物価や最低賃金と比較しても相対的に上がり続けているんですね。 

国際競争のために金がかかるのも分かりますし、国際的に見れば日本の大学の学費が安めなことも分かりますが、個人的にはせめて今の水準くらいに抑えて欲しいなと思います。

国家として教育への投資はコスパの良い投資だと思うので、教育に関してはなるべく幅広く機会を提供できる国であって欲しいと願います。