琥珀色のブックエンド

well-beingの実現がライフワーク

テレワークの不調の原因は、「二酸化炭素」かもしれない

在宅勤務だと頭のキレがいまひとつだなとか、すぐに眠くなってよくコーヒーを飲んでいるなとか、仕事が捗らないと感じていませんか。

こうしたテレワークで集中できない原因の一つは、部屋の「空気」です。

2016年にJoseph G. Allen氏らが発表した論文によると、わずかな二酸化炭素濃度の違いが仕事のパフォーマンスに有意な差が与えていることが分かりました。

在宅勤務が捗らない原因は、気合や根性ではなく、部屋のCO2濃度にもあります。

二酸化炭素濃度とパフォーマンスの関係

オフィス並みの換気で生産性アップ

室内環境は、人の健康や生産性に大きな影響を与えます。

そのため、オフィスビルなどの特定建築物は、建築物衛生法の「建築物環境衛生管理基準」に従って維持管理されることが求められています。

ア 浮遊粉じんの量 0.15 mg/m3以下
イ 一酸化炭素の含有率 100万分の10以下(=10 ppm以下)
※特例として外気がすでに10ppm以上ある場合には20ppm以下
ウ 二酸化炭素の含有率 100万分の1000以下(=1000 ppm以下)
エ 温度 (1) 17℃以上28℃以下
(2) 居室における温度を外気の温度より低くする場合は、その差を著しくしないこと。
オ 相対湿度 40%以上70%以下
カ 気流 0.5 m/秒以下
キ ホルムアルデヒドの量 0.1 mg/m3以下(=0.08 ppm以下)

引用:厚生労働省 HP

しかし機密性が高く換気が不十分な部屋だと、この基準を外れてしまうことがあります。

在宅勤務の時に特に気をつけたいのが、「二酸化炭素の含有率」です。人間の呼気に含まれるため、知らず知らずのうちに室内CO2濃度が上昇し、油断していると基準オーバーになっていることがあります。

また本記事では触れませんが、石油ストーブやファンヒーターを使う時には「一酸化炭素の含有率」にも要注意です。

部屋のCO2濃度と認知機能

冒頭のグラフにも示したように、ハーバード大学のJoseph G. Allen氏らの研究は、部屋のCO2濃度のわずかな違いが認知機能に与える影響を明らかにしています。

この研究の面白い点は、極端に高いCO2濃度を評価しているのではなく、私たちが普通に過ごしている環境で起こり得る「現実的なレベルで、ちょっと高めのCO2濃度」を評価している点です。

これまでも火災現場などでの二酸化炭素中毒になるような極端なケースでの研究は行われてきました。しかし日常生活で体感するような、ちょっと気持ちの良い部屋と、そうでない部屋の違いについて明らかにした点で、非常にユニークな研究です。

研究では、様々な空気環境に設定した部屋で、24名の知識労働者に朝9時から夕方5時まで仕事をしてもらい、その後に認知機能テストを受けてもらっています。

Environ Health Perspect. 2016 Jun; 124(6): 805–812. Fig.2

多くの認知機能項目について、二酸化炭素濃度が低いほど良いスコアを示しています。 

特に「様々な情報ソースから、適切な情報を集めてくる能力」や「様々なソリューションを使いこなす戦略的な思考」といった、より複雑な知的労働に求められる項目のスコアほど顕著な結果が示されました。

赤で示される1,450 ppmの二酸化炭素濃度は、特殊な環境で起こることではなく、1日換気せずに作業していたらすぐに到達してしまうレベルです。

自宅のCO2濃度はどのくらい?

在宅勤務の場合、オフィスのような換気システムが整っていないことが多いので、より気をつける必要があります。

夜締め切って寝ていた寝室などは、朝になると非常に高い二酸化炭素濃度となります。寝ている間も私たちは呼吸をしてCO2を出すので、どんどん室内CO2濃度が高くなるのです。

引用:日本輸入換気システム連盟 HP

こちらのデータによると、留守宅では600 ppm程度の室内CO2濃度が、帰宅すると同時に上昇し朝起きた時には1,500 ppm程度まで上昇していることが分かります。

先ほどの研究の赤色のグラフで示されていた、認知機能が有意に下がる室内CO2濃度です。

ワンルームで暮らしている方は、寝室=作業部屋になるので、朝換気をしないとこの室内CO2濃度で作業することになるので要注意です。

ワンルームでなくても、換気せずに7時間作業していると、朝換気をしない寝室と同じ環境になってしまうので同じく要注意です。

また部屋の気密性によっても異なります。普通に夫婦2人で寝ていた寝室のCO2濃度が4,000 ppmになっていた事例もあるそうです。機密性の良いマンションに住んでいる方は、より一層換気に気をつける必要がありそうです。

実際に自宅のCO2濃度が気になる方は、CO2モニターを購入するのも良い選択肢だと思います。1万円くらいから手に入れることが出来ます。部屋の換気状態が一目で分かるので、快適な空間を維持するために有用なアイテムです。

窓を開けて在宅勤務をしたら劇的に改善した

部屋のCO2濃度対策で最も手っ取り早いのは、窓を開けて換気することです。

空気清浄機では、花粉やホコリやVO2などの有害物質は取り除くことができても、二酸化炭素を取り除くことはできません。

1日中換気して感じたメリット

● 朝一に仕事モードに切り替えやすくなった

朝一のスイッチが入りやすくなりました。スイッチが入りにくいのは通勤という切り替え手段が無くなった影響かと思っていましたが、一晩中たまったCO2のせいだったかもしれません。

● 仕事中の眠気がなくなった

在宅勤務だと眠気を感じることが多くありました。睡眠時間はむしろやや増えているのに不思議でした。刺激の少ない環境のせいだと思っていましたが、これもCO2の影響がありそうです。

● アイディアが湧きやすくなった

特にクリエイティブな作業の生産性が上がったように感じます。研究結果でも、戦略的思考などより複雑な知識労働に求められる能力がCO2濃度と強い影響が出ています。

● 1日の進むスピードが正常化した

在宅勤務をしていたり、1日中部屋にいたりすると、気づいたら夕方になっていたという経験がありませんか。CO2濃度の影響で生産性が低下し1日の密度が下がってしまい、そう感じていていたのかもしれません。

● 寝つきが良くなった

適度に頭や身体を使わないと寝つきは悪くなるものです。1日の密度が上がることで、従来通りのパフォーマンスを発揮し、夜も普通に眠れるようになったと感じています。

1日中換気して感じた不具合

● お隣さんの調理の匂い

隣の部屋で食事の準備が始まると、換気扇からの匂いが入ってきます。ただ私の場合、お隣さんが規則正しいリズムで食事されているようなので、こちらも良いリズムで食事を摂るようになり、むしろメリットだったかもしれません。笑

● 花粉症には少し辛い

窓を開けっ放しにするのは、花粉症には辛いかもしれません。その場合は、換気を1時間に1回程度にして、空気清浄機で花粉対策するのが良いと思います。

おすすめ

最新の空気清浄機をレンタルで利用できるサービスもおすすめです。

必要なタイミングで利用できるのは経済的です。フィルターなどの交換時期を忘れてしまう方や、故障の対応がめんどうに感じる方には、特にいいサービスだと思います。

【レンタル空気清浄機】

これまで自宅は「くつろぐための空間」でしたが、今後は「働くための空間」としての機能も求められると思います。

自宅をより快適に働ける環境にするために建築設計やインテリア商品の開発は、今後もっと進むでしょう。まず今できることとして、換気で可能な限り二酸化炭素濃度を外気に近づけて、知的生産性を高めてみてはいかがでしょうか。

マンションなど片方向にしか窓がない部屋の場合、サーキュレーターを併用して換気するのもおすすめです。空気の流れが良くなり、効率的に換気できます。これからのリーモートワーク時代、CO2濃度をコントロールして認知機能をアップさせるための必須アイテムかもしれません。