琥珀色のブックエンド

well-beingの実現がライフワーク

今後、退職金制度はなくなるのか

20代30代でも老後のマネープランを考えることもあると思います。その中で退職金は 、最もまとまったお金を得る人生イベントのひとつです。

退職金で住宅ローンを返済しきって、夫婦で豪華な海外旅行にいき、

残りは適度に資産運用しつつ生活費に充てていく。

こんなビジョンを今後も描き続けることはできるのでしょうか?

本記事は「30年後の退職金制度」について予測します。

今の20代30代は将来、退職金をいくら貰えるか?

厚生労働省の「就労条件総合調査」によると、退職金がこの20年で1,000万円近く減っています。大卒者の定年退職者(勤続20年以上かつ45歳以上)の平均額は、1997年の調査では2,868万円だったのが、2018年には1,788万円まで下がっています。割合にすると36%ダウンです。

退職金の推移

2050年 退職金予測:全企業平均

2018年には1,788万円でしたが、2050年にはゼロになっても不思議ではありません。

冒頭に紹介した厚生労働省の「就労条件総合調査」を参考にすると、もしもこの20年と同じペースで減額されていったら、今の20代30代が退職を迎える2050年頃には退職金ゼロなります。

極端なシミュレーションにも見えますが、退職金ゼロ時代の到来は十分に想定しておくべきだと考えます。この20年景気変動の波とは関係なく退職金が下がり続けているのは事実ですし、新卒から35年同じ会社で勤め上げる流れが変わっているのは周知のところです。

すでに退職金を支給しないという企業も増えつつあります。

2050年 退職金予測:大企業

大企業はまだまだ安泰と考える方もいると思います。

上の厚生労働省のデータは、社員30名以上の企業の平均値です。大企業だけではなく、多くの中小企業も含まれています。

大企業の平均値は、経団連が隔年で公表している資料が役に立ちます。対象は2,000社程度で、7,8割が従業員500名以上の企業で構成されているデータです。

「大卒総合職で60歳で退職した場合」の推移を紹介します。

2002年 2,525万円

2008年 2,491万円

2014年 2,358万円

2018年 2,256万円

標準者退職金 (注:学校卒業後直ちに入社し、その後標準的に昇進・昇格した者を対象に算出した退職金)における平均額

引用:経団連HP

厚生労働省の発表するより多くの企業を対象とした調査と比べると、減り方は幾分マイルドです。しかし着実に退職金の支給額は減っています

この15年で起きた250万円の減額ペースを単純計算すると、2050年の予測額は今より約500万円減の1,750万円程度となります。

比較的安泰と感じるかもしれませんが、減額し続けている状況は楽観視できません。

退職金が減り続ける構造

上表の中で、濃紺の点線で示したように、退職金の月収換算分が減少しています。1997年調査では45.3ヶ月分支払われていたのが、2018年には34.6ヶ月分にまで減っています。

また月収換算の減少率以上(-24%)に、退職金がダウンしている(-36%)ことから、定年時の月収自体も減少してることが分かります。

つまり、退職金というシステム(月収換算分)も縮小傾向にあり、ベースになる定年時(ベテラン社員)の月収自体も減少傾向、という2層構造になっています。

この背景にある要因は、2つあると考えます。

要因① 定年延長の流れ

定年が65歳などに延長されたことで、企業はこれまで退職金に充てていた人件費を、以前であれば定年退職していたシニア社員に充てていると推察できます。 

この流れは止められないどころか、もう1段階進化して70歳定年制になる可能性も十分にあると思います。あるいは75歳定年制もあるかもしれません。

また定年(稼げる期間)が伸びたといっても、年金支給年齢や寿命も延びている訳ですから、決して金銭的な余裕が生まれる訳ではありません。かつてと同じような老後の暮らしの実現には、それと同じだけの退職金が必要になります。

要因② 人口ピラミッドの変化

退職金を支払うべき年齢の従業員が占める割合が増えれば、企業側の負担も増します。

団塊世代や団塊ジュニア世代が現役として企業を支えていた2000年以降、その割合はずっと伸び続けることになります。人口ピラミッドで見ると、顕著に分かります。

出典:国立社会保障・人口問題研究所ホームページ (http://www.ipss.go.jp/

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2000年頃は、50代前半の団塊世代、20代後半の団塊ジュニア世代がしっかりと支えていたことがこの図からも明白です。

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しかし2020年になると、退職金を支給される60歳前後の世代の割合が、他の世代と比べてもかなり多いことが分かります。40代後半の団塊ジュニア世代がなんとか支えているものの、それ以外では60歳前後の世代が一番のボリュームゾーンです。

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2050年になると、年齢が上であればあるほどボリュームが多い完全な逆三角形型の人口ピラミッドになります。これでは退職金の負担も大きくなるのが一目瞭然です。仮に2050年には75歳定年になっていたとしても、この傾向は変わりません。

つまり、今後も退職金をめぐる企業の負担は増すばかりで、より一層の下落圧力がかかる可能性は十分に想定できます。

POINT

・この20年、退職金は減り続けている

 (2,868万円 → 1,788万円 )

・定年延長や人口ピラミッド変化で、さらに減る可能性も

・大企業でも退職金ゼロになるかも

退職金ゼロ時代はますます現実的なものに思えてきますし、大企業の社員とて安泰ではないでしょう。今のペースなら大企業社員の退職金は2050年に1,750万円と予想しましたが、大企業であっても退職金ゼロになる可能性も考えられます。

現状では退職金が、年金と並んで老後の資産形成のコアになっています。しかし今の20代30代は退職金をアテにするのはリスクです。2050年退職金ゼロ時代がやってきても困らないような人生戦略を一度考えてみることをおすすめします。

大前提にあるのは、健康に働き続けられる身体のメンテナンスです。その上で幾つになっても働き続けるキャリア形成や、若いうちからの資産形成も非常に重要になります。

今の仕事や家庭や人間関係に追われがちな20代30代ですが、人生100年時代を見据え時には「30年後を見据えて今何が出来るか?」という視線で考えてみてはいかがでしょうか。

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)