認知バイアス
直観や先入観、自らの願望やこれまでの経験、他人からの影響によって論理的な思考が妨げられ、不合理な判断や選択をしてしまう心理現象のこと。
引用:野村證券 | 認知バイアス(証券用語解説集)
20代30代のミレニアル世代が投資で失敗しないために、ぜひ覚えておいて欲しいのが、「認知バイアス」という心理現象です。
投資って聞くとなんか騙されそうで慎重になる人も、自分は結構投資のセンスがありそうだと自信のある人も、投資を始める時には一度「認知バイアス」の罠にはまっていないか、注意を向けてみて欲しいと思います。
投資と特に関連のありそうな、3つの認知バイアスを紹介します。
1. 代表性ヒューリスティック
よく出来た話や典型的な話の起きる確率は、過度に高く見積もってしまいがちです。
次のクイズが有名です。
リンダは、31歳の女性。独身で、はっきり物を言い、非常に聡明。
彼女は哲学を専攻していた。学生のとき、差別問題や社会正義の問題に深い関心があり、反核デモにも参加した。
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さて、今のリンダに当てはまりそうなのはどれ?
A . 小学校の先生である。
B . 銀行の窓口係である。
C . 銀行の窓口係であり、フェミニスト運動に積極的である。
過去の調査では89%の人が、BよりCの方がより当てはまりそうだと回答しました。
冷静に考えれば、絶対にそんなことはあり得ません。
確率としては、銀行員である確率(B)が、銀行員かつフェミニストである確率(C)よりも高いのは明らかです。「銀行員」の方が広い概念なのですから。
投資でも同様に、それらしいコメント踊らされてしまうと、投資判断を誤る可能性があります。次のどちらの可能性が高いと思いますか?
A . ZOZOの株価が急上昇する。
B . 裾上げ不要な便利さがウケてZOZOチノが大ヒットし、ZOZOの株価が急上昇する。
もちろん答えはAです。確かにBはありそうなシナリオですが、もっともらしい細部が加わったことで、より確からしいものだと勘違いしてしまいます。
これが代表性ヒューリスティックです。
2. 情動ヒューリスティック
感情レベルでの良し悪しの判断が、リスク・リターンの判断を鈍らせがちです。
例えば、外貨預金と聞くと、なんだか安心感があります。
[豪ドル預金:金利2%、手数料1円]という商品があるとします。
預金は安心というポジティブな先入観で見ると、「金利は日本より圧倒的に良いし、手数料も1円って全然安そうだし、めっちゃ良いじゃん!」と思うかもしれません。
ただ金利2%というのは、為替が下がるリスクの対価なので、必ずしも儲かるわけではありません。(豪ドルがその分下落するリスクが加味されています。)また幸運にも為替が下がらなかったとして、20%課税されたら1.6%分のリターンです。
その上、手数料1円というのは、豪ドル約80円に対して1.25%相当です。さらに手数料は往復分かかるので(円→豪ドル、豪ドル→円)、合わせて2.5%相当です。
ということは、仮に為替が変わらないという楽観的な仮定においても、利益1.6%・手数料2.5%というマイナス0.9%がベースとなる負け戦です。
このように、「預金は安心」という好意的な感情に引っ張られ、冷静にリスクとリターンの判断を出来なくなることを、情動ヒューリスティックと言います。
恋愛も同じかもしれません。好きになった相手のことは、良いことばかり見えて、悪いことが目に入らなくなりがちです。
(まぁ恋愛だと、それはそれで幸せなのかもしれませんが。。)
3. 利用可能性ヒューリスティック
簡単に思い出せること程、より起きる確率が高いと勘違いしがちです。
最近の出来事や感情に訴える出来事ほど記憶に残りやすく、それが起きる確率を高く見積もりがちになります。
例えば、友人から「1週間前、家で食べた生ガキにあたって大変だった」という話を聞いたとします。するとその日の晩にどこかの居酒屋で生ガキを出されたとき、いつもより警戒するのではないでしょうか。
冷静に考えれば、1週間前に友人が家で食べたカキと、居酒屋で提供されるカキとは、ほぼ関係しません。それなのに、思い出しやすいことで確率を見誤ります。
同様に、企業が一度何かの不祥事を起こしそれが大々的に報道されると、今後も何か問題を起こすに違いないと思われ、株は売られがちになります。ただ実際には、今後何か問題を起こす確率は、その不祥事前後で変わったわけではありません。
今後問題の起きる確率を推定するためには、過去数年間のリコール頻度を確認する方が、よほど参考になります。
このように、直近のひとつのニュースに左右されて企業のことを判断するのではなく、客観的なデータに基づいて冷静に判断する重要さを思い知らされます。
さらに情動ヒューリスティックや代表性ヒューリスティックが組み合わさると、手に負えないバイアスが生まれてしまいます。
認知バイアスに左右されるダメな投資行動
認知バイアスの存在を知らないと、私たちは無意識のうちに認知バイアスに左右されて、結果不利な投資行動をとってしましがちです。
例えば、雑誌の推奨銘柄を高値掴みして買ってしまうのもその一例かもしれません。
そもそも「推奨銘柄」と書かれていると、情動ヒューリスティックによって基本的には良い銘柄なんだろうなーという先入観を持ちます。
そこに「今後高齢ドライバーが増え、自動運転がさらに普及し、自動運転技術に強いXX社の株は伸びる」というありそうなシナリオを読むと、代表性ヒューリスティックでますますその銘柄への気持ちが強くなります。
さらに「テスラ:ついに本物の自動運転技術を年内に顧客に提供へ」といったクールな記事を目にすると、代表的ヒューリスティックによって、その自動運転銘柄の魅力は確信となります。
もちろん、ひとつひとつの事象は事実なのですが、その事象が認知バイアスによって”過度に魅力的に見えてしまう”ことで、高値掴みをする可能性があります。
認知バイアスを回避する良い投資
こうした認知バイアスを把握した上で、むしろ逆手に取って今の株価の一時的な歪みを見抜くことができれば、非常に有利な投資運用が出来ることでしょう。
ただし普通の人はそれを見抜けた気分になっても、実際に見抜くことは困難です。
一方、認知バイアスに左右されない投資することは簡単です。
楽天VTIなどのインデックスファンドへのつみたて投資なら、銘柄選びや購入タイミングに関する認知バイアスに左右されることなく、淡々と株式を購入することができます。これは”負けない”投資をする上では、非常に有用な戦略です。
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投資初心者の方には、是非ともお勧めしたい戦略です。
またインデックスファンドへのつみたて投資を始めると、淡々と続ける単調さに飽きを感じて、個別株にチャレンジしたくなるかもしれません。
そんな時は、また認知バイアスに関して学びなおしてみると、改めてインデックス投資の良さを再発見することと思います。
心理学に関する知識も豊かになる上に、ともすれば退屈なインデックスファンドへのつみたて投資を続ける良いモチベーションになると思います。
人生100年時代、心理学も学びながら、認知バイアスを回避した”負けない投資”でしっかり資産形成していきたいですね!
認知バイアスをビジネスにも活かすためには、こちらの書籍もお勧めです。
『リスクにあなたは騙される』の内容を、よりビジネスや日常生活で実践的に活用できるよう、とても分かりやすく解説頂いています。
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